巷に流れている曲。
音楽の好きな方でしたら、それらを聴いてクラシックの曲かあるいはジャズの曲か、
その違いは分かりますね。
それでは、クラシックとジャズは音楽的にはどのように異なるのでしょう。
これら二つの違いを、よく次のように言い表します。
「クラシックは作曲家の音楽であり、ジャズは演奏家の音楽である。」
これは大胆な発言かもしれませんね。
この言葉で全てを表そうとすると、多少乱暴かもしれません。
しかしクラシックとジャズの違いという観点から見ると、ポイントをおさえた適切な表現だと思います。
クラシックに於いては、作曲家が書いた楽曲は絶対的なものであり、
演奏家は楽譜に書かれている通りに演奏することを要求されます。
そのうえで、例えばオーケストラでは、指揮者が音の抑揚表現などを指示します。
それによって、同じ曲でも、また同じオーケストラであっても、異なる指揮者によって異なる抑揚表現が生まれます。その結果それぞれの魅力ある演奏(音楽)が生まれてくるのです。
それでは、ジャズの場合はどうなのでしょう。
ジャズにも勿論作曲家によって創作された楽曲であったり、
あるいは演奏家のオリジナル曲であったり、演奏されるための曲は存在します。
ただこれらの曲は概ね短く、一般的にはこれから演奏されていくアドリブ(即興演奏)のための、
モチーフとして考えてよいでしょう。テーマ(曲)のメロディーの一音一音も重要ですが、
それ以上に、テーマが内包されている和音(コード)やその進行、及びリズムをいかに解釈していくか、
その解釈にもとづいて、演奏家はメロディーやさらに場合によってはコード(和音)を再構築して、即興演奏(アドリブ)を繰り広げていく。それがジャズの真髄であり、ジャズの醍醐味となります。
クラシックとジャズはある意味真逆の生き方をしているのかもしれません。
しかしそれだからこそ、両者は互いにリスペクトして、最高の芸術として認識しあっているのです。
さらにそのうえで、近年クラシックとジャズそれぞれの伝統や価値を守りながら、両方の垣根を飛び越えて、融合されてできた音楽スタイルが生まれ、確立されてきました。
例えば、最初のテーマはクラシックの伝統に沿った演奏をしっかりと行い、その後中間部においては、テーマに沿った和声進行に従って、ジャズの完璧なアドリブ演奏をこなすといった、一つの曲の中でまるで真逆の二つの演奏スタイルを見事に融合させた音楽ができてきました。
オイゲンキケロ(1940年生)、ジャックルーシェ(1934年生)、いずれもクラシック出身の音楽家ですが、このスタイルの代表的なジャズピアニストとして人気を博しました。